モフモフのモフモフのブログ

読書の記録、日々の生活のこと書いてます

伊礼智「伊礼智の住宅設計作法 小さな家で豊かに暮らす」の感想

スポンサーリンク

建築家 伊礼智著

「伊礼智の住宅設計作法 小さな家で豊かに暮らす」

を読みました。

この本を初めて読んだのはもう5年前になります。


何気なく久しぶりにパラパラと眺めていたら
心に響く言葉が目に留まったので
改めて一から読んでみることにしました。

伊礼さんは「15坪の家」に代表される小規模住宅がうまいと定評があり
設計、施工の標準化・品質向上に取り組まれている沖縄県出身の建築家です。

私は一級建築士として住宅の設計・デザインの仕事をしていますので
今回心に残ったことをインプット・アウトプットとして書き留め

日々の仕事に活かせたらと思います。

 

5年前に読んだのですが内容をだいぶ忘れていました...

本の構成

第1~2章では伊礼智さんの設計の考え方、基本姿勢について
第3~5章では日々の仕事でヒアリングからプレゼンテーションに至るまでの手法について書かれています。
第6章はプランニング
第7~15章は伊礼さんの真骨頂、開口部から外構の納まりの考え方についてです。


伊礼さんがこの本を「作品集でもなく、図面集でもない、ブログのような気軽な住宅本」と表現されている通り、
全体的に写真や図面が多く(ほぼ全ての頁に写真!)とても読みやすい構成になっていますので、住宅の設計に関わる全ての方にオススメの一冊です。

どうしてそうなのかを考えて結論を出し、次に生かしていかなければならない

これが私がこの本で一番印象に残っているフレーズです。
この言葉は5年前に読んだ後もずっと覚えていて常に意識をしていました。


伊礼さんが学生の頃、建築家の吉村順三さんに師事されており「いいなあと思ったら、どうしていいのか考えなければダメだよ」と言われたそうです。
”「気持ちいいなあ」「心地いいなあ」だけで済ませていたら成長しない、どうしてそうなのか考えて結論を出し、次に生かして生かしていかなければならない”と受け取ったそうです。


プロとして設計をするには空間に身を置いたときや写真を見たとき、
プランの構成や部材の納まり、素材のセレクト等空間の質を高めている要素を
的確な言葉で簡潔に表現できるかにその設計者の実力が現れると思います。


優れた料理人が料理を食べた時に素材や隠し味まで言い当てるのを見たことがありますが、それと似ているのかなと思います。

僕の目指す設計とは、斬新さや新しい形を考えることではなくて、心地よい空間や、可愛らしく、住まい手が楽しんで生活できる空間を考えること

本書の「はじめに」の中の一文です。


”敷地条件への対応から設備機器まで全ての「難しい全体」をバランスよく「まとめる力」が設計” 
”また、設計とはクライアントの要望を理解することであり、それを超えて社会に提案する事でもあります”
と伊礼さんは言います。

設計者それぞれ目指すところは違うと思いますが、
斬新な空間を創りだすことに注力するよりも、
住まい手が人生の長きに渡って楽しんで生活できる空間を考える前提を
忘れてはいけないと思いました。

プレゼンというのは「プレゼント」

伊礼さんは初回のプレゼンでは自分が一番と思う案を一つだけ用意するそうです。
「あなたの家はこれです」と言える自信作を初回に示すことが肝心で、プロとして迷ってしまっては住まい手はもっと迷い、その「迷い」に自分が振り回されて不本意な設計に引きずり込まれていく...とのこと。


耳が痛いです^^;
プレゼントと言える程、住まい手のことを考え抜いたベスト案を
初回に示すことが肝要!

1単純に解く~2小さくまとめる~3心地良い空間を創る~4スタンダードな住まいを目指す~5外部と関わる~6見えないものをデザインする

 第一章「設計の考え方と基本姿勢」の見出しです。
住宅設計の要点をこれほど簡潔にまとめたものを見たことがありませんでした。

1から6までそれぞれ奥が深いですが、特に「4スタンダードな住まいを目指す」での言葉が心に響きました。


”控えめで簡素であっても、品のいい、滋味溢れる住まいをつくっていきたい。今の時代の、日本のスタンダードな家づくりを考えていきたいと思っています”
”よく考えられて丁寧に設計された普通の感覚の、当たり前の家でありたい”

 

ただお金を掛けた豪華な家が良い家ではない、ということをプロの設計者であれば常に考えて丁寧に家づくりをしていきたいと思いました。

まとめ

 5年ぶりにこの本を手にとってみましたが
改めて住宅設計についてよくまとまっていてかつ、内容の濃い本です。


シリーズのⅡも出版されていますのでこれを機に購入して読んでみたいと思います。