前回は『後ろ肩の前で手首か返るくらいの感覚で下半身からスイングするとオリックス吉田選手のスイングになる!!』
という気付きを書きました。
「あなたの背中に中華なべ」というのは手塚一志さんの『バッティングの正体』に登場するフレーズです。
中編は吉田選手の動画を見て改めて素振りを繰り返して考えたことを書こうと思います。
手打ちを回避できる
前回の記事の吉田選手はゲージの前で手首を返す様な動きを繰り返していますが、実際は手首を意識的に返しているのではなく、「バットを持った両腕がつながっている背中の中華なべが回る事によって手首が返っている様に見える」のだと思います。
中華なべを回すと慣性力と腕とバットの重さでオートマチックに腕とバットが振られます。中華なべに意識を置くと腕には意識が行きにくくなるので手打ちを回避出来る可能性が高くなります。手で操作が出来ないので、常にフルスイングをする(しかない)ことになります。つい当てに行ってしまう癖がある方に良いと思います。
さらに、中華なべも上半身を動かして回すのではなく、下半身の動きがで回転するようになると下半身主導のスイングになります。手塚理論では下半身のスタートは骨盤(弓状線)です。
『骨盤力 アスリートボディの取扱説明書(手塚一志著)』(ベースボールマガジン社)より引用
骨盤(弓状線)から動作をスタートして中華なべを回す素振りを繰り返し、以下の点に気が付きました。
①素早く骨盤の動きを中華なべに伝えるには、意識の中で骨盤と中華なべを常に近く保つ必要がある。
背中を丸めて構える王選手は骨盤と中華なべの距離が近い
『打率を上げて長打を狙う バッティング戦略論(手塚一志著)』(PHP研究社)より引用
②中華なべをその場に残して前足をステップすると割れを作ることができる(スクラッチも?)。腕を残して割れを作るよりも上半身を残しやすい。
③中華なべの傾きや回転方向がバットの軌道を決める。骨盤が、傾くと上に乗っている中華なべも傾いてしまう。中華なべを上手く回す為の姿勢、構え、下半身動作が必要。上の写真の王選手は骨盤の上にしっかりと中華なべが乗っている。
①②③を意識して素振りを繰り返し、無意識に出来るようになれば手打ちではない、常にフルスイングで勝負できると思います。
ドアスイングが治る
さらに前回の記事のゲージの前で吉田選手が素振りで繰り返している動作は『イナーシャル・リダクション」という技術だと思います。
イナーシャル・リダクションとは、
「慣性力の影響を考慮しバットの振り出し角を修正する作業」=「イナーシャル・リダクション」(inertial reduction)だ。
そして、慣性力が働くバットスウィングの中にも、当然このイナーシャル・リダクションが必要になってくる。身体が回れば慣性の力が生じる。その力分を“差し引いたスウィング軌道のイメージ”で修正しておかなければ、えらいドアスウィングになってしまいかねない。(図3)。本当はココでインパクトしたい、でもスウィング中には慣性力が掛かるから、普通に振り出してしまえば、こんな後ろよりの場所へバットが遠回りしてしまう。なので、それを見越しあらかじめその分を差し引きした場所に向かってバットを振り出さなければならない、というわけだ。コイツが、大根切りの正体だった。
『バッティングの極意 うねり打法(手塚一志著)』より引用
実際に手首が返る位置よりも手前に設定する事によって、実際のスイングで大きな慣性力が加わると、膨らまずにコンパクトな 軌道になるように調整しているのです。
また、世界のホームランキング、王貞治さんの動画を見るとレベルスイングかアッパースイングに見えますが、本人は右足(前足)を打つくらいのイメージで素振りをしていたそうです。
『王選手コーチ日誌 1962-1969 一本足打法誕生の極意』 荒川博著 P9「特別寄稿 一本足打法と私 王貞治」より
当時、一般的に行われていたのは「レベルスイング」のバッティングです。あとは「アッパースイング」によるバッティング。人間の構造からしても、長くてヘッドが重いバットを振るときは、どうしてもスイング中にバットのヘッドが下がります。「だからこそ、ダウンスイングの意識をもって振るべきだ」というのが荒川さんの持論でした。まずはボールを上から見るよう意識すること。そしてトップの位置から最短距離で鋭くバットを振り下ろす。その方がヘッドアップしないし、ボールを強く叩くことができるんだと、そういうふうに教わりました。そうしてボールの上からバットを入れてやることでボールにスピンをかけ、打球に角度をつけて遠くに飛ばすというわけです。
中華なべを慣性力や、重力に任せて回すと締まりの無いドアスイングになってしまいます。王さんのように最短距離でバットを振る為にはイナーシャルリダクションを意識して中華なべが回る方向を下半身のポジションと動作で調整する必要があるようです。
ヘッドが立つ
「ヘッドが立つ」ということについて、名球会トリオの古田さん、前田さん、稲葉さん、筑波大博士の安藤秀さんが打撃論を展開している動画を紹介します。
動画の中で安藤秀さんが「ヘッドが立つ」とは、「手首の角度が開かないこと」と解説しています。中華なべを回すスイングは体の前に立てたバットが、両腕の内旋、外旋、内旋の動きで左右に倒れるだけなので手首の角度は構えのままです(正確にはスイングの途中で慣性力で倒れるが)。
『バッティングの正体(手塚一志著)』(ベースボールマガジン社)より引用
まさに「ヘッドを立てる」ことが出来る動作が「中華鍋を回すこと」と言えるでしょう。
『手塚一志の上達道場 バッティングの巻(手塚一志著)』(ベースボールマガジン社)より引用
まとめ
いかがでしたか?
「背中の中華鍋」を回す意識でスイングするとバッティングにとって大切なことがいくつか改善されそうだということが見えてきました。
・手打ちを回避できる
・ドアスイングが治る
・ヘッドが立つ
よくバッティング指導で出てくる言葉ですね。
またまた長くなってしまったので…「後編」に続きます。
手塚理論を「バッティング」と「ピッチング」と「ランニング」に分けて解説!
観戦だけの方も読み物として面白いですよ↓
骨盤力 アスリートボディの取扱い説明書 | ||||
|
バッティング戦略論 | ||||
|
最後まで読んで頂きありがとうございました。
【ご注意】
このブログの内容は、現役をとっくに引退した素人おじさんが趣味で大好きな『手塚理論の研究』と自分なりの『バッティング』を極めたいという「道」を書いているだけなので、現役の方は参考になさらないで下さい。当然、手塚一志さんの意図とは全く違う内容になってしまっている可能性も十分にありますのでご注意ください。