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【書評】『逆説の日本史18 幕末年代史編 黒船来航と開国交渉の謎』井沢元彦

『太平の眠りを醒ます上喜撰(じょうきせん)、たった四杯で夜も眠れず』という当時の幕府を皮肉った狂歌は歴史教科書に必ず登場します。「上喜撰」とは緑茶の銘柄で四杯飲んだだけで眠れない→「蒸気船」が「四隻」アメリカから来ただけで夜も眠れなくなるほど慌てる幕府の様子を狂歌にしたものです。
本書は詳細な史料をもとに、日本を開国させたいアメリカと幕府の役人の駆け引きが詳細に記されています。

 

 

『逆説の日本史』の好きなところ

 私が 『逆説の日本史』シリーズの特に好きなところは、以下の点です。

1.歴史を分かりやすく学べる。
2.歴史上の出来事と現代が、どの様に繋がっているかが関係性が良く分かる。
3.学校の授業では習わない従来の「定説では無い」説があるという事実を知る事ができる。


『まえがきにかえて』で井沢氏は、歴史を知ることの意義について述べています。

・二千年分の知恵を活用しない手はないと思うのです。
・歴史を読むことは、知識を得ることよりも知恵を生むことだと思っています。

 

 歴史を読むことで知識を得て新しい知恵が生まれる。読書することでストレス解消にもなる。なんかお得な感じがしますね。

 

 アメリカの目的は補給基地だったのに..

 アメリカが日本に開国を求めて交渉にやってきた、最大の理由は日本の植民地支配が目的ではなくアジア進出、中国との貿易をする為の補給基地の確保だったとのことです。当時アメリカから日本へ渡航する場合は大西洋からシンガポール、香港、マカオ、上海を通ってぐるりと遠回りしていたので、日本に補給基地を開港してもらうことは大変メリットがあったそうです。

その為、アメリカは最初(ペリー来航から9年前)は友好親善を求め、その要望に応じることは日本の国益にもかないました。

しかし当時の江戸幕府は有名なペリー来航の日がくるまで何も対策もせず、のらりくらりとアメリカに対して不誠実な対応でごまかそうとしたことで最終的にアメリカを怒らせてしまい、武力(砲艦外交)により威嚇され開国をせまられることになってしまうのです。武力により政治の実権を握っている幕府にとって最大の屈辱だったと思います。

 

しかし江戸幕府は徳川家康の思想を儒教で捻じ曲げ、鎖国を「祖法」 と思い込んで頑なに守ろうとしました。しかしそれらは全て幕府の怠慢によるものと筆者は切り捨てています。

徹底した情報管理と、その上に胡座をかいた「何もしない」政権、これが幕府である」と。

 そして明治時代に向けて日本に大きなハンデを背負わせてしまうことになります。

 

役人や官僚の描写がリアル

 本書は 幕末史の中でも、明治維新に関係した有名な人物が登場するというよりも、地方の役人や幕府の官僚が主役です。アメリカの開国要求に対して幕府が何もしないので、なんとかその場を乗り切ろうと現場の担当者が嘘をついたりごまかしたりする様がリアルに描写されています。

中にはやることが多過ぎて過労死をする役人(江川英龍)も出てきます。筆者は「日本初の労災死」ではないか、と言っています。本文の中でも紹介されていますが、江川英龍はかなり優秀な人物であり、異常なスピードでアメリカの脅威への対応を行なっています。その為負担が集中し、過労死…現代でもありそうな話ですね。

 

現代の組織でもトップが何もせずに現場が困る、というのはよくある話で、どの時代も同じなのだなぁと感じました。

歴史というと今の時代と考え方が違う、と感じてしまいがちですが、今も昔も人間の考えや行動はあまり変わらないのかもしれません。

技術の進歩以外は人間はあまり進歩していないという話も聞いたことがあります。
そんなことを改めて想像してしまう本書でした。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。